MicrosoftのCopilot+ PCが本格的に発売されました。そこで、ASUSから提供された「Vivobook S 15」を使って、Copilot+ PCの魅力と搭載されているQualcomm Snapdragon X Eliteの性能を検証していきます。
Copilot+ PCとは?
- Microsoftが推進するAI PCのマーケティングプログラム
- 従来はクラウドベースだったAIアプリケーションをローカルで実行可能
- NPU(Neural Processing Unit)を利用することが大きな特徴
- Intelの「Evo Platform」や「Ultrabook」と同種のプログラム
Copilot+ PCは、Microsoftがノートブックの次の進化を目指すプログラムです。NPUを搭載することで、AIアプリケーションをクラウドに頼らずにローカルで動作させることができます。OEMメーカーはこのプログラムに参加することで、Microsoftとの共同マーケティングや高いリベートを得られます。
Copilot+ PCの要件
- 40TOPS以上の性能を実現したNPUを内蔵したSoC
- 16GBのメモリ
- 256GB以上のストレージ
- Secured-Core PC
Copilot+ PCには、上記のような高いハードウェア要件が設定されています。特に40TOPS以上の性能を実現したNPUが最大の要件で、現状ではSnapdragon X Eliteのみがこれを満たしています。これは過去のIntelがCentrinoでWi-Fiを要件にしたのと同様の戦略で、PCプラットフォームを次の段階に進化させることが目的です。
Copilot+ PCの新機能
- リコール: ユーザーのPC利用歴をスナップショットとして記録し、生成AIが検索して必要なデータを提示
- コクリエイター
- ライブキャプション
- Windows Studio エフェクト
- イメージクリエイター
Microsoftは、Copilot+ PC向けに新しいアプリケーションを提供します。目玉機能の「リコール」は、ユーザーのPC利用歴を記録し、生成AIがそれを検索して必要なデータを提示してくれます。ただし、プライバシーの懸念から、リコールは当初は利用できず、後日提供される予定です。
ASUS Vivobook S 15の仕様
- 15.6型OLEDパネル(2,880×1,620ドット)
- 32GBメモリ
- 1TBストレージ
- SoC: Snapdragon X Elite X1E-78-100(最下位SKU)
ASUS Vivobook S 15は、本日から販売が開始されたCopilot+ PCの一製品です。15.6型の大型OLEDパネルを搭載し、メモリとストレージも十分な容量を確保しています。SoCとしては、Snapdragon X Eliteの最下位SKUであるX1E-78-100が採用されています。これは上位SKUと同じ基本構造ですが、クロック周波数などが低めに設定されています。
Snapdragon X Eliteの性能
- シングルスレッド性能が大幅に向上
- マルチスレッド性能も高い
- Core Ultra 7 155H比1.88倍、Apple M3比1.64倍のマルチスレッド性能
- GPUはApple M3、Intel Arc GPUに劣る
ベンチマークの結果、Snapdragon X Eliteは従来の弱点だったシングルスレッド性能が大幅に向上していることがわかりました。また、プライムコアが12基あるため、マルチスレッド性能も非常に高く、Core Ultra 7 155Hや Apple M3を上回る結果となりました。一方、GPUに関してはAppleやIntelに劣る点が残されています。
Arm版Windowsの互換性
- 新しいバイナリ変換機能「Prism」で性能が向上
- ISVによるArm版アプリの提供が増加
- Microsoft 365アプリは準Armネイティブ
- IMEやCreative Cloudなどの課題は残る
Arm版Windowsには、x86命令をArm命令に変換するバイナリ変換機能が実装されています。24H2から新しい「Prism」が搭載され、性能が大幅に改善されています。また、ISVによるArm版アプリの提供も増えてきました。一方で、IMEやCreative Cloudなどの互換性課題は残されています。ただし、Microsoftがこの問題に取り組み始めたことで、環境は改善の方向に向かっています。
まとめ
Copilot+ PCのASUS Vivobook S 15は、Snapdragon X Eliteの高いCPU性能と新しいユーザー体験を提供します。ソフトウェアの互換性にはまだ課題があるものの、解決の9合目まで来ているといえるでしょう。個人のニーズを評価した上で、この新しい「夢」を買ってみるのも良いかもしれません。